脳卒中患者さんの上肢の動かしにくさの問題は上肢の運動麻痺?

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ベッド上や、背もたれ座位での上肢機能は比較的残存しているにも関わらず、いざ端座位や立位で上肢を動かそうとする、トイレの後に手を洗うために上肢を挙上(+前方リーチ)しようとすると、途端に動かせる範囲が狭くなる…緊張が高まってしまう…といったことはないでしょうか?

この検査と生活場面での運動機能の差はなんでしょうか?

背臥位と座位では体幹の安定性が大きくことなります。

日常生活における端座位や立位での上肢挙上や前方リーチといった動作を行う場合、不要な身体動揺が起こらないように予測的姿勢制御というフィードフォワードの姿勢調整が行われます。

立位での上肢前方挙上時には、脊柱起立筋やハムストリングスが先行して働くことが明らかになっています。(Balen’kii VY et al:Elements of control of voluntary movement,1967)

さらにBouisettらの研究では、上肢屈曲時の活動をより細かく測定している。結果として上肢屈曲側の同側のヒラメ筋の活動抑制と半腱様筋、大殿筋の先行的な活動増加が認められた。加えて反対側の下肢では大腿筋膜張筋の活動が生じていた。(A sequence of postural movements precedes voluntary movement,1981)

また手すりなど外部の固定物を掴む、背もたれにもたれることで、予測的姿勢制御の活動は減弱すると言われています。外乱による姿勢の変化が起こり得ない状況になると、予測的な姿勢調整が不要となってしまうんですね。

また脳卒中患者さんの場合には、運動麻痺が重度であるほど予測的姿勢制御は非麻痺側筋による制御に依存し、かつ予測的姿勢制御の出現が遅延することが示唆されています。(渡邊ら、脳卒中片麻痺患者における予測的姿勢調節:第46回日本理学療法学術大会、2010)

だからこそ、上肢の麻痺がある方に介入する場合、プラットホームに寝かせて上肢単独に介入するだけでは日常生活の向上にはつながりにくいといえます。もちろん上肢機能そのものに介入しなければいけない方もいますが。

では、背臥位での上肢の随意性はあるのに、いざ端座位になると同じように動かせないのか、図で説明していきます。

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体幹伸展位と屈曲位での上肢前方リーチの様子です。

赤:脊柱起立筋

青:僧帽筋ー三角筋ー前腕伸筋群(Superficial Back Arm Line)

黄:大殿筋

です。個人的見解ですが、青字のSuperficial Back Arm Lineは上肢のリーチングで重要な役割を果たす筋膜経線であると思っています。上肢の空間保持(挙上の保持)を担う三角筋、物体把持の準備動作であるプレシェイピングのための前腕伸筋による手の背屈・手指伸展を作る筋が同一のラインを形成するのは興味深いですね。また三角筋は前部・中部・後部線維があり、上腕の内旋〜外旋のどのポジションでも、三角筋のいずれかの線維が挙上保持の役割を果たせるのではと思ってます。

 

では体幹のポジションが上肢挙上にどう影響するかを考えましょう。

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体幹伸展位では脊柱起立筋は求心性収縮をしており、脊柱伸展〜骨盤前傾を保持します。そのため上肢挙上時にも体幹が屈曲に持っていかれることなく、僧帽筋により肩甲骨は胸椎を起始に安定できます。さらに三角筋は肩甲骨・鎖骨に付着を持ち、前述の僧帽筋により肩甲骨の安定が保たれることで、三角筋の収縮は上腕骨挙上に使われます。

しかし体幹の伸筋力が低下してしまい、いわゆる円背姿勢となるとどうでしょうか。円背・骨盤後傾により脊柱起立筋や胸腰筋膜は引き伸ばされ、その張力により座位姿勢は保持されます。この場合筋は収縮や緊張の変化による調整はあまり行われていません。重さと筋の伸張された張力のみに依存しています。その状態で上肢を前方リーチしようとすると上肢の重さが前方に移動するために、体幹はより屈曲する方向に働いてしまいます。

体幹の求心性の収縮力が低下していれば体幹はより屈曲してしまい、僧帽筋も上腕骨方向に引っ張れやすくなります。つまり肩甲骨を胸椎方向に引っ張る作用が弱まります。そうなると三角筋は肩甲骨が不安定となっているため、十分な収縮力を発揮しにくく、収縮も上腕の挙上だけでなく肩甲骨を下方回旋し、上腕骨側に引く作用にも使われてしまいます。

そのため、患者さんは上肢が挙げにくく、さらに前方へと体幹が倒れそうになる感じを経験する可能性があります。

ちなみに生活場面では前方リーチは体幹を伸展位で保持するだけでなく、体幹前傾も加わりますよね。より遠いものへリーチしたり、洗面台で手を洗うなどする場面では。

図でしめすと、

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こうなりますね。前述した脊柱起立筋の活動だけでなく、股関節伸筋である大殿筋が過度に前傾して倒れないように、骨盤の前傾に上手くブレーキをかけていきます。

トイレ後の手洗いなんかは、立位で行うこともあるので、実際には下肢の支持性、筋活動も考慮していく必要がありますね。

日常生活における脳卒中の方の上肢機能を考えていく際のヒントになればと思います!!

 

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