ACA梗塞の特徴と退院後を知ること。

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今日当院にて、あるカンファレンスがありました。このカンファは急性期・回復期・維持期のセラピストが集まり、ある症例さんがどのような経過を追ったのか、それぞれの時期においてどのような関わりをしたのか?を知るカンファです。

僕はこのカンファがとても好きで、結局回復期を退院した患者さんがどうなってるの?と知ることができるからです。

今回は珍しい脳梁離断症状が顕著な症例さんでした。ACA梗塞ですね。

少し脳の話から・・・

まずはACA梗塞とは前頭葉の内側面の梗塞です。

主な損傷部位は、腹内側前頭葉前野、脳梁、帯状回、補足運動野、1次運動野(下肢領域)です。

この範囲が広いか狭いか、上か下か、偏ってるかで、下肢の麻痺の程度や、脳梁離断症状や失語や、失行の程度などの症状の違いが現れます。

今回の症例さんも、拮抗失行、強制把握、道具の強制使用、観念失行、下肢の麻痺がありました。

しかし特徴的なのが、回復期に入り、やる気をみるみるなくしたこと。

人の提案や指導には拒否的になりやすく発動性が低いが、自分の欲求には発動性が高い。

そして老健にいったらやる気を取り戻した。。。

この方は頭の良い方でプライドも高い方だったようです。

リハの方からは、

・回復の希望が強い。

・道具の強制使用も理解はしていたが、なぜ起こるのかわからず戸惑っている

・失行のため学習が困難(手順を覚えらない、歩行の杖の使い方もヘタ・・・)

などなど。

何が言いたいかといいますと、この方は、回復期病院で良くならず、老健に行ったら良くなった症例です。

僕は悔しかったです。回復させる所で悪くになり、リハが十分にできない所でよくなってしまう。

単なる環境の違いでしょうか?障害受容のタイミングの問題しょうか?

でもこういう患者さん回復期には必ずいます。

そんな患者さんに私たち回復期は何をしなければいけないのでしょうか?そういうことを考えられるカンファレンスでとても良かったです。

・なぜやる気がみるみる低下し、リハビリに拒否的になったのでしょうか?

・本人さんのhopeに沿ったアプローチだったのでしょうか?

・本人さんのストレスとなる生活の様子で改善策はなかったのでしょうか?

・精神的に落ち込む時期に、チームとして集まって話し合いは設けたのでしょうか?

・こちらが○○してくださいというリハではなく、本人さんのやりたいことを引き出すような関わりができていたのでしょうか?

本当に情動や信頼関係が重要だったケースでした。

老健のPTさんは、ただ寄り添って話を聞いたそうです。最初は少しそのPTさんをうざかっていましたが、徐々に小さな頼みごとをするようになり、徐々に自分からやれること、できることをするようになり、PTさんが提案した俳句の読み(hopeは確か手紙?俳句?を書く事)、そして断絶していたほかの入居者を話すようになり、行事に参加したり、歌を歌ったり、急須を左手にもち右手にコップを持ちお茶を入れてくれたり(この時点で拮抗失行等はなくなっている)、最終的に笑顔の写真をみせてくださいました。

特別なことはしていません。しかも3ヶ月たらずで変わりました。

この方は自分がしたいと思えたら行動ができる方です。

でも病院ではできませんでした。

こういう前頭葉内側面の方の特徴として、やる気の問題があります。つまり報酬です。

人は報酬があれば行動しますが、報酬がないと判断すればなかなか動きません。だから特に左ACA梗塞では発動性の低下も起こります。

前帯状回(ACC)がキー領域ですが、ここは「心理的な快・不快」の評価をするところです

たとえば

・心理的な痛み→他人が刃物で刺されるときに自分も痛い感覚を味わう

・金銭的な損失(相対的な損失も含め)→ギャンブルで負ける

・情動的な刺激

・うそをついたとき

・矛盾を感じたとき

このような時に前帯状回は働きますが、この方はここの機能が働きにくい状態でした。

だから報酬の価値判断が上手く処理できず、情動的に嫌なものや嫌、自分がしたいことはやるというような行動特性だったと思います。もちろんACCだけでなく、内側前頭前野も損傷していましたので、これらを含めた意思決定だったと思います。

加えて失行や補足運動野の損傷で新奇な学習もエラー続きで。

ただこの方の特徴が脳梁離断症状がかなり顕著にでていたことです。画像的にもまさしくでした。

ただ、結果は病院では上手くリハが進まず、老健では笑顔でその人らしさを取り戻したことです。

これを重々受け止め、僕たち回復期のセラピストもこういう方には、何が本質的に大事なのかを考えて介入していかなければならないと感じたと思います。

ただ追記するとすれば、ACA領域の梗塞の患者さんは、大枠で捉えると似てる症状も多いです。これらがわかっているとまた介入も変わってくると思います。だから脳の機能解剖が大事なんです。で占めたいと思います笑。

ACA梗塞のポイント

・心理的報酬の価値判断が難しくなる、情動的判断が意思決定に大きな要素を占める?

→人の示指を拒否的になりやすい

・動作の手順や新奇な課題の定着には時間を要する可能性が高い

・発動性が低くなりやすい

このような情動的・精神的機能に考慮した関わりが大切ですね。

それに失行や失語等の高次脳機能障害、そして下肢の麻痺という運動機能障害が伴う病態と解釈できます。

以上!最後までよんでいただきありがとうございました。


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