脳卒中のリハビリで「姿勢制御」の臨床への活かし方?

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脳卒中のリハビリで絶対外せないのが「姿勢制御」ですが、とても深い知識が必要です。しかし臨床に活かすことができなければ、知識は単なる知識です。

ただがむしゃらに覚えるだけでは、知識を臨床に活かすことはできず、ポイントを押さえながら解釈していく必要があります。

今回は、脳卒中分野では外せない「姿勢」を臨床に活かす視点の内容になります。

姿勢制御とは、「予測的姿勢制御」と「反応的姿勢制御」

用語で言えば、姿勢制御は「定位」と「安定性」と言われます。もっと姿勢制御を簡単に言えば、随意運動の前に働き(随意運動の背景)無意識に制御されるもの。

さらに簡潔にすると、「運動の前に姿勢を整え、バランスを崩せば立て直す」ものですね

臨床においても、随意性が高くても立位が上手く保てない方、歩行時に屈曲位の姿勢で、重力に対して自分の姿勢を制御できない方がいますよね。だからPTでは姿勢制御のアプローチが主流なのです。

姿勢が保てない脳卒中の方が多いのはなぜ?キーワードは「腹内側系」

服内側系とは、

①皮質延髄網様体脊髄路
②前皮質脊髄路
③網様体脊髄路
④前庭脊髄路
⑤視蓋脊髄路
(⑥間質核脊髄路)

が挙げられますが、ここも知識ばかになってはいけません。大事なことは患者さんに「姿勢制御を学習させられる価値」を提供できるかです。なので自分の中にこられを落とし込む作業が必要です。

脳の中は見えませんので、「今、◎◎脊髄路が働いている」と教科書の知識を当てはめても確かめようはありません。しいて言えば、そうかもしれないし、そうでないかもしれない。

セラピストに必要なことは、その姿勢が「良いのか?悪いのか?」だけでなく、「悪いならなぜ悪くて、どうしたらそれが解決できるのか?」を患者さんに教えてあげることです。その背景に脳内知識が必要になります。

それでは、解決させるために、姿勢の評価をしますが、脳卒中の姿勢制御を分かりやすく2つに分けて考えてみましょう。

ポイントは、予測的姿勢制御か、反応的姿勢制御かです。
言い換えれば、トップダウン的制御か、ボトムアップ的制御か。

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予測的姿勢制御と反応的姿勢制御の脳内の主要領域を簡単に復習しましょう。

【1】予測的姿勢制御(いわゆるAPAs)の主要領域

  1. 大脳基底核
  2. 高次運動野(運動前野、補足運動野)
  3. 前皮質脊髄路

この3つです。大脳基底核ループや大脳小脳ループもこれらに関与しています。
運動のプログラミングの際に、随意運動に先行して大脳基底核や高次運動野から、脳幹網様体にアクセスし体幹、近位筋のtoneを高めます。
また前皮質脊髄路も同じような働きをします。

予測的姿勢制御を獲得するためのポイント

①予測を作るのは「経験」つまり運動学習です。また運動学習には注意の操作が必要です

②随意運動に伴う姿勢の獲得が必要。(最初は姿勢を保持することに注意していいですが、最終的には姿勢保持への注意力を下げ、動的な姿勢制御を獲得する)

具体的に「起立」の場合で考えてみます。

まずは予測的姿勢制御は動きの前に姿勢を作るでした。
だから起立の姿勢を整えることは大事です。これは意識的にも整えた方がいいです。

立つ時に座位姿勢が悪ければ起立も上手くいかないですが、無意識に立つ前に「一旦COPを後ろに移すことができません」動く前には逆方向にCOPが動くため重心が前に移すきっかけを与えます。これがAPAsです。右足を1歩出すときは、左に重心が移る前にCOPが右踵に移りますよね。それ左へ重心を移しやすにつながっています。

これができないのが予測的姿勢制御の破綻の1つ。だからこれを意識的にも良いので、まずは経験することが大事。

できるようになってきたら、次は注意の操作です。

最初は姿勢を保持することに注意をさせて、慣れてきて恐怖感が減って、余裕が持ててきたら、下肢や上肢を動かし(随意運動)課題の中で使える姿勢にもっていきます。

この時に「課題難易度」に注意しましょう。多くの方は課題難易度が高すぎです。口に手を持ってくる、頭に手を載せるなど、ごく簡単な課題から動的の姿勢制御獲得に入ることが大切です。

 

【2】反応的姿勢制御の主要領域

  1. 中脳
  2. 前提
  3. 小脳
  4. 脳幹網様体

この4つです。バランス崩した時に反応的に姿勢を戻す役割です。姿勢が崩れると、視覚、前庭、体性感覚情報に変化が起こり、それに見合った領域が反応するだけです。
視覚は後頭葉の第一視覚野にもいくが、無意識に中脳の上丘にも視蓋脊髄路として活動します。

前庭は三半規管が首の傾きの変化を完治し、前庭神経核に送り、小脳がどれくらい傾いたのか?の誤差を計算し、前庭脊髄路としてフィードバック的に姿勢を戻します。

体性感覚はもちろん一次感覚野にも上がりますが、無意識な深部感覚は脊髄小脳路を上がり、網様体脊髄路から姿勢を修正する。

立ち直り反応は脳幹レベルで制御されると言われますが、脳幹や小脳、そして脊髄等の皮質下機能は損傷をまぬがれていることが多いです。

しかし臨床的では、患者さんが座って横に傾いた時に、立ち直り反応が出ない方は多いです。これはつまりフィードバック的な姿勢制御も機能不全に陥っていると考えられます。

ただ、機能的には不全を起こしていますが、両側性の支配ということからも改善はしやすいです。

だからいわゆる神経生理学的に、反射や立ち直り反応を引き出すようなことも1つですし、脳幹系を意識した練習を積極的に行うことは利にかなっています。

反応的姿勢制御においても「経験」が必要です、バランス崩しそうで、自分で制御するような課題が反復することで自律的にバランス機能が改善していきます。

ただ課題の難易度が高すぎると、身体の自由度を下げ、柔軟なバランス反応が引き出せなくなるため、難易度調整は重要です。

 

少し整理!

①皮質(6野➡︎高次運動野、4野➡︎前皮質脊髄路)と大脳基底核は予測的姿勢制御に強く関わり、動作の前に姿勢をセットし、動作が変わる中でも絶えず姿勢や筋緊張の調整を行うように、脳幹網様体に指令を送っています。

②脳幹網様体、中脳、小脳、前庭は反応的な制御に強く関わり、不意に姿勢が崩れた時(外乱検査はこっちをメインに評価)や姿勢が変わった時に反応的にバランスを保ちます。➡︎立ち直り反応、平衡反応、保護伸展反応等がこの領野で支配される

(細かく言えば、網様体脊髄路は橋網様体脊髄路(伸筋群)、延髄網様体脊髄路(屈筋群)、前庭脊髄路は下肢伸筋群などあります)

*そして、これらは双方向性の関係性があります。つまり予測的と反応的と2つに分けるも、それらの間には相互的な関係がある。
予測的な反応が悪ければ、反応的姿勢制御も悪くなりますし、逆もそうです。

 

実際の患者さんを想像してみる…

臨床に多い被殼出血では、大脳基底核と前皮質脊髄路(皮質脊髄路の損傷)のトップダウン的な姿勢制御が破綻していることが想像できます。

視覚経路や筋骨格系の問題も重なり、反応的な姿勢制御も不十分。さらに麻痺が重度になれば随意運動が起こせず、ますますバランスが悪い身体となります。

単なるラクナ梗塞やBADのような皮質脊髄路のメインな損傷だけでも、バランスが悪くなるのは、麻痺によって体が動かせずバランスが悪いこともあることと、前皮質脊髄路の予測的姿勢制御の影響が考えられます。

 

<臨床で確認する視点>

・予測的姿勢制御の評価:脳画像の損傷程度、動作の前の姿勢、近位筋・体幹の筋緊張(副内側系支配)

・反応的姿勢制御の評価:バランス崩した時に、頭部や体幹のバランス反応の有無や程度

<リハビリ戦略>

予測的、反応的も姿勢制御の学習が必要です。学習には「課題難易度」、「練習量」、「注意の操作」、「FB」などが大切な要素になります。立位の場合、立位の良い姿勢ができ、動的場面でも同じ良い姿勢を確保しながらできるか?を確認しながら、姿勢の運動学習を図る必要があります。

 

まとめ

①脳卒中患者さんの脳神経的姿勢制御(予測的姿勢制御と反応的姿勢制御など)と、身体的姿勢制御(麻痺の重さ、バランス能力など)の視点で考える。

②姿勢制御は無意識的だが、学習という視点は外せない。
→課題の難易度はもちろん、注意の操作、どういった経験をするのかが大事な考えである。