どちらが正常歩行と片麻痺歩行でしょうか?
さすがにここで悩むことはないかもしれません。
ところがいざ、少しでも正常歩行を目標に介入しても、なかなか上手くいかないのではないでしょうか?
歩行周期というと、IC(イニシャルコンタクト)では踵から着いて、足背屈・膝伸展・股関節屈曲位みたいに視覚的に観察可能なイベントや関節アライメントに目が向きがちです。
視覚的に観察可能なイベントは客観的な評価がしやすいですし、歩行周期に分けることでどの相が正常から逸脱しているか発見しやすいですね。
でもとある相が正常から逸脱していた場合、その相に問題があるとは限りません。その前の相に問題があるかもしれないですし、さらにその前の相かもしれません。またその相の対側下肢の問題かもしれません。
でもまずは基本となる正常歩行について考えていきましょう。正常を知らないと異常に気づけませんよ!
ということで、正常歩行における3つの特徴を書いてみます。
歩行周期の各相:立脚期

立脚期の相を書いてみました。略語が分からない方は自分で調べてみてください!
(新人さんへ;分からないことはまず自分で調べる癖をつけましょう!)
では正常歩行における3つの特徴を書いてみます。
①体幹の直立化

歩行において、身体は以下の2つに分けられます
・Passenger unit
・Locomotor unit
歩行において、前進の役割を果たすのはLocomotor unitです。そして歩行では前進かつPassenger unitの動きを以下に少なくするか、体幹の直立位を保つか?が重要となります。
上半身がグラグラしていたり、傾いていればそれだけ姿勢の保持に余分なエネルギーを使うことになりますし、コップの水を運ぶ、歩きながらスマホを操作する(これ怒られるやつですが)などといった歩行+αができなくなりますね。
そう考えると上半身は伸展位であってもカチカチに固定していれば、Passenger unitの動きは少なくなります(でも実はこれも非効率で常に固定しているのもエネルギー効率悪いですし、脊椎がしなるように動くことで衝撃吸収などもするので硬ければ良いというわけではありません)。
歩行におけるPassenger unitの役割は、周囲の環境に目を配ることのできる頭頸部の自由度と物を操作できる上肢の自由度、そしてその自由度を保証する体幹の伸展保持/空間保持能力と衝撃吸収や課題遂行に応じて変化できる脊柱・胸郭の柔軟性といえます。
臨床的には、上記のPassenger unitの機能は、下肢機能を基盤にしています。体幹の伸展位保持にも大殿筋の股関節伸展作用が関与しています。座位では比較的バランスが良くても、いざ立位・歩行となると不安定性が増強するケースでは、上半身の機能はあったとしても、下肢機能の問題から上半身の能力を十分発揮できないこともあります。
倒立振り子のメカニズム

図の四角は骨盤、丸は足首をイメージしてください。左から右へ進んでいる状況です。
実際の歩行では股関節の動きがあるため、四角(骨盤)は左から右へ(骨盤の上にPassenger unitを載せて)水平移動する感じです。
高校あたりで物理の授業で出てきた運動エネルギーと位置エネルギーの知識がここでは役に立ちます。
「力学的エネルギーの法則」
運動エネルギー K + 位置エネルギー U = 力学的エネルギー E = 一定
足首を支点とした場合、歩行で前進する慣性力を最大限活用できれば、その慣性力で骨盤を持ち上げることができ(IC→MSt、運動エネルギーを位置エネルギーへと変換)、MSt以降は棒が倒れる力を利用し、骨盤を前進することができます(位置エネルギーを運動エネルギーへと変換)。
ただここで問題が起こります。脳卒中患者さんをはじめ、下肢の骨折など、下肢がいわゆる正常な役割を果たせなくなると、上記にある足首を支点とすることが難しくなり(Rocker function)、かつ図のような膝の伸展保持ができなければ足の背屈(下腿の前傾)を大腿を通じて、骨盤を前に進める力として活用ができなくなります。言い換えると下腿と大腿をつなぐ力が弱いと下腿が前傾した際、大腿部がついていけなければ、膝は屈曲し、重心は下がり、骨盤も前方へと進む力にはなりませんよね。
この部分をどう再獲得していくか?が効率の良い歩行につながるために大事なポイントになりますね。
ロッカー機能

前述した倒立振り子を実際の関節に置き換えたのがロッカー機能ですね。このロッカー機能が上手く作動することで、効率の良い歩行を行うことができます。

ロッカー機能を遂行するには、連続する筋活動(張力)の切り替えが必要となります。あと当たり前ですが、関節可動域もなきゃ動きようがありません。でも関節可動域があれば歩行の時に動いてくれるわけでもありません。脳卒中の方で歩行をしているにも関わらず下肢関節の関節可動域制限がある場合、歩行中にはその可動域は使われていないから制限につながっている可能性があります。
そしてロッカー機能が上手く作動するためには足関節の底背屈軸が進行方向に向かっていないといけないですね。これがまた難しいんですね。
歩行の特徴について、3つに分けてお話ししました。そして実際の臨床で考えなければいけないこと、悩むことを挙げました。まずは基礎を知ること。そして臨床の患者さんの歩行や介入前後の変化から基礎をどう臨床の解釈、介入につなげるアイデアを考えること、そしてそれを繰り返すこと、そして継続することが大切になってきます。
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