PT・OTの方は国家試験のために必ず骨と筋の解剖学は勉強していますよね。
でも目の前の臨床に活かせていますか?
骨と筋の解剖学、さらには運動学は非常に大切です!!
というすごーく当たり前の話を今日はします。
【目次】
1.触診はできて当然!でも筋肉触れるだけじゃダメ
2.相手が動かない状況で触れるだけではダメ
3.トップダウンにもボトムアップにも解剖学は大切
4.どんな治療理論や手技でも解剖学は大切
5.解剖学なきハンドリングはない
1.触診はできて当然!でも筋肉触れるだけじゃダメ
僕の学生時代には、最終学年(僕は専門学校なので3年性)の時には周囲の同級生も触診はできていました。
放課の時に肩こりや腰痛の友人を治療と称してお互い体を触りあっていました。
ありがたくも僕は臨床実習で、
これらの本を書かれている先生方が在籍していた職場に運良く行かせて頂きました★
おかげさまでクリニックの空き時間であるお昼ご飯から夕方まではみっちりバイザーの先生に全身の触診を教えて頂きました。本当に指先から足先まで全身!!
しかも実習中は本当に臨床重視で、まずバイザーの方からこの方はこの関節の可動域制限が問題で、その制限は〇〇筋だよー、後はよろしく!!!
みたいな感じで、患者さんが待っている間に、学生の自分が直接、バイザーの先生に言われた筋の硬さや動きを試行錯誤で必死にアプローチし、バイザーの先生が時間で来た際に、その筋の動きが改善したかどうか?可動域の改善につながったかどうかをチェックして頂き、フィードバックをもらい、じゃあ次はこの筋がターゲットになるかな?というやり取りを毎日させて頂きました。
上記のように、毎日自分の触診と介入が正しくできているか?をチェックしてもらい、フィードバックをもらえるすごくありがたい環境で勉強できました。
このおかげです。今の自分があるのは。
あとは学生時代は暇さえあれば自分の身体を触りまくってましたね。体幹後面を除けば、ほぼ全身の筋肉触れますから。自分の身体ならタダですし、多少痛くっても文句言われません。てか言えません笑。
テストが早く終わった時には、テスト用紙の裏に関節ごとの骨と筋の絵をいつも書いてました。今日は肩、次は股関節、ってな感じで。骨を書いて、深層から順番に筋肉を上に重ねて重ねて書いてましたね。
こんなことしてるうちにだんだん3Dでイメージできるようになってきます。
加えて自分で身体を動かしてる時にどこを使っているかを意識するトレーニングを僕は一年目の途中あたりから行なっています。いわゆるボディワークですね。
それはこの本のおかげです。自分の身体で感じること。感じられないことは存在しておらず言葉にできない。言葉で表現できなければ他者へは伝わらないということを痛感させられた本です。
そんなことで触診や骨・筋の解剖を自分の身体で感じることを続けてくる中で気づいたことをまとめます。
【触診を続けることで分かってきたこと:まとめ】
①たくさん触ることで、今触れているものが何筋であるかが分かる。
②他動運動にて可動域制限があった際に、どの筋が最も制限に影響しているか(硬くなりそれ以上伸長できないほど硬くなっているか)が分かる。
③随意運動時にどの筋が働きやすく、どの筋があまり働いていないかが分かるようになってくる。関節運動の軌道やパターンと筋収縮の関連性がみえてくる。
④触れなくても関節の運動軌道とどこから動き出すかでどの筋が硬くなったり、伸ばされていたりするかがイメージできるようになってくる。
解剖学的な知識として骨と筋を知り、①ができるのがいわゆる筋を触知する第一歩ですね。
まずは触っているものが何か分かること、その筋のどこを触っているのか分かることは大切です。①が分からなければ②以降のプロセスに進むことはありえません。
そういう意味では触診ができることが大前提です!でも②〜④のプロセスがないと結局仮説検証を行えるだけの情報を収集できないことになります。だから筋を区別して触れるだけではダメってことです!
2.相手が動かない状況で触れるだけではダメ
学校で習う触診は、背臥位など特定の姿勢でそのまま筋を触知したり他動的にストレッチをかけたりと、相手の随意運動を評価するためというより、セラピスト側が触りやすいポジションを規定した中で触ります。
でも実際の臨床ではそのような姿勢を取ることが難しかったり、不安定な姿勢や動作時の異常な運動パターンが見られた場合に、その要因を探るために筋活動と関節運動の関係性を評価していきます。
つまり動的場面かつ相手の動きを邪魔せずに骨や筋の動きを評価できる能力が求められます。
これが難しいんですね。筋を触知しようとするあまり、相手を押してしまい実は外乱となり、それが余分な姿勢制御の筋活動や不安定性からくる防御反応による全身の過緊張になってしまっていたり、そもそも関節運動を邪魔していたりもします。
動的に触診できる力、これがトップダウンの評価にも、ハンドリングが上手く相手の反応を導き出しているかの効果判定をするためには必要です。
3.トップダウンにもボトムアップにも解剖学は大切
トップダウンは活動・参加から機能面の問題を予測的に評価、介入に進めていくこと
ボトムアップは機能面の問題を拾いあげて、活動・参加への関係性を見出していくこと
僕的には、トップダウンで活動を評価していく際にも解剖・運動学の知識がないと結局、患者さんの抱えている問題にたどり着けないのでは?と勝手に思っています。それはPTだからかもしれませんけど。
活動、日常生活動作も重力下における関節運動です。関節運動を生み出すのは筋収縮・筋緊張の変化です。動作が上手くできないのは何らかの原因で、その動作を完遂するための関節運動が上手く起こせない、不足していることが予想されます。
それは中枢神経系の問題かもしれませんし、筋の問題かもしれません。心理的な問題かもしれません。
でも動作を完遂するためには、身体を動かさなければいけません。どこを使っているのか?どこが使われていないのか?それを評価するためには骨・関節運動と筋収縮・緊張の状態が分からないとできません。
4.どんな介入、治療理論、手技でも解剖学は大切
私たちセラピストの介入対象が「機能ー活動ー参加」である限り、機能と活動の関係性を常に把握しながら、介入可能性のある問題を抽出し、解決していく必要があります。
そして改善すべきものが日常生活であるなら動作を構成する関節運動と筋収縮を的確に評価できないといけません。
介入により筋収縮の向上を図ったのなら、それが患者さんの抱える日常生活における困難が軽減されなければいけません。介入によって変化した筋収縮が日常生活動作における関節運動を変化し、かつそれにより日常生活上の困難が解決または軽減していかなければいけません。
それはどのような治療理論や徒手技術でも同様ではないでしょうか?
様々な理論や技術の対象が「機能ー活動ー参加」である限り、どんな理論も技術も基礎や向かうべき方向は同じはずです。そのルートが違うだけです。
山登りに例えられることが多いですよね。目指すべき場所は同じ、です。道が違うだけです。
ただどこの道から登るにも、解剖学・運動学は登山グッズと一緒で必要ですよ!
裸で登らないでしょ!冬山に!!!ってことです。
5.解剖学なきハンドリングはない
ハンドリング含め徒手操作では、身体接触を通じて、相手の体験を変えます。
触れたいセラピストと触れられたい患者さん:ハンドリングを考えてみる。
↑僕のハンドリングについて考えです。
私の考えるハンドリングは、
徒手的な介入により対象者に入力される情報を操作することによって、患者さんの体験を操作し、その体験を自ら作り出せる(出力を出す)スイッチを見つけるよう導く
というイメージです。
操作・操縦のターゲットは、
見かけ上の姿勢や動きではなく、不適切な姿勢・運動を生み出している情報
だと言えます。
バク転ができる、または自転車に乗れる人が、できない人に対して「こうだよ」「こうするんだよ」の「こう」の言葉に内在する体験や解釈がそもそも違うんです。
できる人の「こう」とできない人の「こう」には大きな隔たりが存在します。
その上手くいく時の「こう」を身体を通じて体験し、自己にてその体験を再現できるルールを見つけてもらうためにハンドリングは有効だと感じています。
ハンドリングで関節運動を他動的に起こすことで運動が生まれることはありません。
ハンドリングの目的は、対象者の出力が出やすく、それを認識しやすい身体内部と外部のセッティングをすることが大切です。
ハンドリングは本人が自分の問題を解決するスイッチをセラピストと対象者で見つける作業。
最後にスイッチを押す(出力)のは本人にしかできません。
上手く姿勢が保持できている、または動いている時の状況をイメージし、かつそれを徒手的に再現し、見た目だけでなく、相手の体験そのものを変化できるように、徒手的に触ります。
どんな関節運動の軌道に修正されれば良いのか?
その際にはどこの筋が働いて欲しいのか?その時筋はどの方向に縮み、その張力はどこに関節運動を起こすのか?
その関節運動は隣接関節にどう影響して…
どう重心移動して、それは接触面の圧をどう変え…
といった、3Dな骨の運動と筋の変化、そしてそれに伴う感覚の情報をイメージできることでハンドリングの精度は高まっていきます。
そこは名前を知っているだけでは、触っている筋の名称が分かるだけではできませんよね。
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