正しさだけでは人は動かない。
共感には理屈よりも納得が必要なのである。カルロ・ペトリーニ
「言っていることは分かるけど、言われてもできないから困ってるんです。」
私自身も過去に、患者さんから言われたことがある言葉。
セラピストは正常から逸脱した状態や動きを見つけるのは得意。
でも見つけて、指摘するだけではダメ。
むしろ逆効果。というお話
”異常”を見つけるのが得意なセラピスト
「ここが弱いですね」
「ここが硬いですね」
「お尻が引けますね」
「背中が丸いですね」
「その動き方じゃダメですよ」
などなど…教科書的な姿勢や動作のパターン、左右差などから逸脱した、いわゆる異常な状態、筋緊張や姿勢・動作パターンを見つけることが多いです。
もちろんそうした状況での姿勢や動作は、非効率で疲れやすく、長期的には肩や首、腰、膝が痛くなったりという二次的な問題を引き起こすこともあるので、将来的な問題点を予測するためには大切です。
でも、でもですよ
「その動き方してたら腰痛めますよ〜」
なんてゆうだけではダメですよ。
それはダメ出しでしかないですから。
異常な姿勢や運動パターンが出現してますよ、そのパターンでは体壊しますよ。
と言われても、患者さんは困ります。

「じゃあどうしたら良いの?何を気をつけたら良いの?」
か分からないままです。
問題を指摘するだけではダメ。
問題点を見つけることは大事ですが、見つけることは介入のゴールではありません。
ばっちりスタートな訳です。
その問題解決に向けて、私たちは介入していくのですから。
というか上記のような異常なパターンというのは、私としては問題点ですらありません。
異常なパターン=問題点???
異常な高緊張、関節可動域制限、筋力低下、姿勢や動作パターンの非効率さや円滑さの低下はもちろん、日常生活を阻害します。
でもなぜそれらの現象が引き起こされるか?を考えているでしょうか?
筋の過緊張や高緊張、スパズムは何らかの目的や意図、意味があります。
もしかすると、緊張を高めることでその関節の安定性を高め、体重を支持しようとしているかもしれないですよね。
そうした目的があったとしたら、その筋をリラックスさせることは良いことなんでしょうか?その結果関節の安定性、支持性は低下し、転倒リスクは高まるかもしれませんよね。
正常から逸脱した現象にも、意味がある
目や手で確認できる現象にとらわれすぎずに、その現象がなぜ起こるのか?なぜ患者さんはそうせざるを得ないのか?という視点が大切になります。
正常と言われる状態は何なのか?を考える
先ほどの支持性を保証するためにある筋(Aとします)の高緊張を呈している場合、なぜAの緊張を高めざるを得ないのか?を考える必要があります。
そのためには、対象となる関節の安定性を作る筋は何があるかを知らなければいけません。
そこでその関節の安定性を担うのは、A,B,C,D筋が重要であると調べた結果分かるとします。
そうすると、B,C,Dが荷重時に参加しているのか?を評価する必要がでてきます。
その評価により、例えばC,D筋が全然使われていない!ことが分かれば、
・介入対象:C,D筋
・効果判定:C,D筋の活動の向上と、A筋の高緊張の軽減。それに伴う荷重量の向上
ということになります。
悪いところを見つけるのは比較的簡単です。
でもその悪い所、目立つ所は、何かうまくいかなくなった部分を代償している可能性があります。
本来の問題点は、うまくいかなくなっている部分です。
その部分を見つけ、患者さん自身がその問題を解決していくのをサポートしていくことが大切です。
人は、使えていない(使っていない)
部分や感覚は意識することが難しい
腰痛や肩こりの人もそうですが、
痛みというサインにより腰や肩にかかっている負担に気づきますね。
なぜ腰や肩など痛みが出るくらい負担がかかるのでしょうか?
痛みがない時には効率性を優先しがちになります。
できるだけ力を使わずに。
使いやすい部分を使って。
自分の分かりやすい感覚を使って。
肩こりや腰痛の方も、痛くなっている事実は分かりますが、なぜそうなるのか、なぜそうなってしまったのか?は分かりません。
セミナーで参加者の方にも、座位や立位を自分で感じてもらうんですが、意外と分かんないんですよ。
良い座位って何ですか?と聞くと
支持基底面が…
身体重心が…
コアスタビリティが…
体幹の安定が…
骨盤の安定が…
頭頸部がリラックス
バランスが良い…
倒れない
楽
なんて用語が出てきます。
ではそれを
自分の身体でどう感じてますかー?
なんで倒れないって分かるんですかー?
って聞くと、みんな私から目を逸らします(笑)
普通に座る。倒れることを気にすることなく。
これって簡単なようで実は難しいんですよ。セラピストでもよく分かんないんです。
言葉ではそれらしい専門用語を並べられますが、自分の身体で座るを感じて説明しようと思うとすごく難しい。
でも座っている時には、
歩いている感じもしなければ
立っている、寝ているとはもちろん感じず、
座っている、と感じますよね。
あなたはなぜ座っていると分かるんですか?一度自分の身体を使って感じてみてください。