患者さんの効果とは、運動学習だ!
ってことで今日は「運動学習」について熱く語ります!!
前回は僕の臨床感は「患者さんが実感してなんぼ」みたいな感じで、脳から言うと、入出力の関係(or予測と結果の関係)について書きました
よくリハビリは運動学習と言われますが、まさしくそうです。
何か新しいことが覚える。これ学習です。
患者さんが麻痺した身体で新しく、寝返る、立つ、歩くを覚える。これ運動の学習です。
だからセラピストは運動学習について知らなければいけません!
運動学習のキーワード
脳から言うと
①教師あり学習、②教師なし学習、③強化学習
原則やポイントから言うと
・学習者が、学習するべきことを分かっていること
・目標の達成方法が分かっていること
・運動スキルであること
・注意の焦点化
・課題の難易度
・練習量
・転移性
まずは、脳から説明です
基本的に運動学習を認知期→連合期→自動期としたとき、学習初期で、脳で働く部位は
皮質:頭頂連合野、前頭前野、高次運動野、(海馬)
皮質下:基底核、小脳
*身体の学習は暗黙的(反対は明示的)で、連続的な学習で、意識や注意は重要でないと思われるかもしれませんが、暗黙的であれ脳内では皮質の活動が確認されています(運動と脳)
なので必ず大脳皮質がないと運動学習は進まないと思います。脳卒中の患者さんが障害を負った中で学習するなら、尚更ですね!
学習後期では、皮質下中心に、連合野の活動が収束していきます。
つまり、活動初期は、
・より前方
・より上方
・より外側
・より広範囲
です。これがポイントです。
例えば、より前方というのは
前補足運動野(pre-SMA)と補足運動野(SMA)を例に・・・
学習初期では、順序を覚えたり、注意を馳せたりと、より認知的要素が大きいため高次運動野の中でも
より前方が活動しやすいです。運動前野でも同じです。
pre‐SMAや運動前野の前方は、より前頭前野とより密接な関係にあり、逆にそれらの後方はM1とつながりが強いです。(バランス的に)
なので学習初期には、高次運動野の中でもより前方の領域が活性化していきやすいです。
これは皮質下の大脳基底核でも同じですね!より前方(=尾状核頭)が初期に活動し、学習後期には被殻の活動へとシフトしていく。
つまり、学習初期というのは
・より前方(前頭葉に近い領域)
・より上方(皮質活動)
・より外側(記憶を頼りの出力ではなく、外界の感覚頼りに出力するため)
・より広範囲(特に高次脳領域が活発!)
そして、学習後期には、この反対。つまり
・より後方(工事連合野であればより後方領域という意味)
・より下方(皮質下)
・より内側(記憶化)
・より限局化(片麻痺で言えば、病変側へ)
と活動がシフトしていきます。
これが学習時期による脳活動の大まかな変化です。
あとは、学習様式によって
連続的か適応的か。暗黙的か明示的かにより、あるところがより強く活性化したりします。
それが基底核‐補足運動野or小脳‐運動前野‐頭頂葉下部ですね
そして基底核は強化学習に、小脳は教師あり学習に関与しますね
強化学習も、教師あり学習も基本的に比較して学習が進むタイプです
だから比較を用いると、学習が促進されますよね!なのもリハビリだけでなく
・自分の現状と理想の自分の比較ができるから、やることが分かる
・無数のものからの選択でなく、数あるものからの選択=認知的負荷小さいため容易に学習が進む
・より良い選択が可能だから、報酬も感じやすい
・比較して違いがわかるから、同じような失敗を避けられる
こんなふうに私たちの日常でも同じです
次に、原則やポイントから言うと
・学習者が、学習するべきことを分かっていること
・目標の達成方法が分かっていること
・運動スキルであること
・注意の焦点化
・課題の難易度
・練習量
・転移性
でした。これは僕の独断と偏見のポイントです笑
考え方としては、より学習しやすい視点とは?でいいんです。何も全てできなくても
・学習者が、学習するべきことを分かっていること
→普通に当たり前ですよね!だから患者さんになんのためにやるか説明し、今は何を感じたり、何をできることが目標なのか?が患者さんが自覚していること。ですよね!
☛言語的な理解
・目標の達成方法が分かっていること
→ゴールが見えていること。つまりイメージができることです。ゴールをなんとなくでも知っているのと、全くわからないとでは、学習スピードが違いますよね。だから患者さんに先にハンドリングでこんな感じですよ!提示するのは良いと思います。
☛報酬予測=辺縁系の活性化
☛イメージ=高次脳領域、特に高次運動野の活性化
・運動スキルであること
運動スキル=フォーム、正確性、スピード、適応性
です。学習初期にはフォームと正確性を重視し、後期にはスピード、適応性を促していく
基本的にはこれでいいです。
運動スキルを最適化していくことが大切です。だから課題志向型練習が効果的なのです。そして能動的に動く!これが鉄則です
☛能動的に動くとは、つまり予測の情報と結果の情報が存在するということです。他動的だけでは、出力情報がないため、結果の情報と照合できません
・注意の焦点化
→注意は本当に大切です。だから注意の評価をしっかりする必要があります。
→動作全体で上手くコツがつかめなければ、局所的な注意をはさんで、相に分けて練習後、全体練習に移ります。そして徐々に動作から、周囲や違うものへ注意を向けてもできる課題を提供していく
☛局所への注意の選択が感覚機能への検知を促進させる
☛前頭葉の選択的注意の減少
・課題の難易度
→ちょっとがんばれば、できる所。これを見つけるのがまた難しい笑
・練習量
→コツをつかんだら、患者さん自身が一人で行う時間も提供。そして病棟でも再現できることが理想。
練習量は病棟でしっかりかせげるように。Nsに方法をしっかり伝えるのもよいかも★
☛脳は基本的に使用頻度に依存する。使った回路は強化される
・転移性
→歩行なら、歩行練習が一番歩行の学習を促進するということ。これけっこう大事。
こういう要素が多いと学習が促進されやすいのです。
学習が促進されるとは、つまり患者さんの能力や機能が改善するということです。
だから練習量を多くしたり、課題指向的な訓練が、エビデンスの高いものとして示されているわけです。
ただ上記に加えて、個人的に臨床で重要視したいのが、2つあります!!
①脳血管患者さんは感覚障害を呈することが多いため、body schemaやbody image を作ることが大事です。
今の体の情報を基に出力をする。(前の記憶ではなく)
なので!
患者さんが自分の体を感じる練習も必要です
で、そこで!
自分の体を感じるのが苦手なら、視覚や言語を用いれば良いのです。
つまり患者さんが認識できる感覚を利用するのです。
そこから頭頂連合野を通じて、視覚から体性感覚を感じたり、非麻痺側から体性感覚を感じたり。(異種感覚変換)
学習はいきなり黒幕に手を出しても難しいです。より簡単に促せる所から入るのがポイントです。
だから課題難易度も、今よりもちょっと難しい課題を練習するのです。
体の認識も同じで、一旦視覚を返せば、患者さんはイメージしやすくなるのです。
ただ、感覚とはバランス的なので、
視覚を取り去った中で、より体性感覚的な練習も取り込むことは必要です
そんなふうに自分の体を再認識する時間も取りつつ、能動的な課題を遂行していく。
特に視床出血や被殻出血で麻痺+感覚障害がある際(より後方領域の損傷)は、この自分の体を知ることが大事なんではないでしょうか?
もう1つは
②注意を与えても、力を要求しないことです。
筋力をつける目的なら良いですが、動作を学習する段階では、力をたくさん出すことに意識させすぎない。むしろ抜くことや感じることに意識させる
なぜなら過剰に力が入った手足では、感覚を感じることはできないからです
楽に動くためには、出力を鍛えるより、入力をしっかり捉えながら、最小限の力で動く。
経験的にも、力を入れることに過剰に意識させると効果は低いです。
(ある程度はもちろん要求はしますが)
ふー。。。
お疲れ様です。運動学習についていかがだってしょうか?
・・・長いですね笑
最後に、患者さんはきれいに歩くことが目標ではありません。もう一度、その人らしく、社会へ地域へ生活を営むことが目標です。
せっまーいPT室で、機能ばかりやっていてはダメです。生活に活きなければ意味ないです。
だからもっと病棟を見て、もっと屋外や応用動作にチャレンジをするべきです。
速く歩く練習もしかり、風の強い日もしかり、
数回の経験の有無が患者さんにはものすごく大きいこともあると思います。
もう1度言います。
患者さんはもう1度社会へかえすことがリハビリの目標です。
外で出かけることだけでなく、他者と話し笑うことも、お楽しみレベルでも味をしっかり感じられそれを家族に伝えられることも、社会生活なのです。
そして患者さんは必ず前の動けた体と、今の動きにくい体を受け止め、乗り越えていかなければいけません。
それができないと、家に閉じこもりになりやすく、他者とのコミュニケーションを避けてしまいます。
だから、入院中に免疫をつけなければいけません。自分の体をさらけ出すではありませんが、
入院中から、他者に見られる経験を作るのです。数こなせば免疫がつきます。
吉尾先生から教えていただいたことです。
最後に・・・千里リハビリテーション病院を見学して、想像を超えた病院の考えや質の違いに感銘を受けましたが、なにより患者さんのことを考えた病院?でした。あれはもはやホテルですね笑
33部屋の1病棟に、プラットフォームがわずか2つ。
これでもリハビリができるのです。環境が(患者を)寝かせないのです。
出来る範囲で僕の病院にも還元できるところはしていきたいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!