私たちは筋肉の専門家、神経の専門家ではありません。
臨床では患者さんを良くする専門家です。
それが急性期ではより医学的情報やリスク管理するための情報が重要であり、地域のリハではより介護・福祉のこと、多職種の視点などが重要になります。
私は神経科学が好きで、患者さんに対して応用しようとしていますが、根本は患者さんを少しでも良くなれば、どんな方法でもいいと思っています。
だから、例えば神経科学に関してはスペシャリストだ!筋や動作分析に関してはスペシャリストだ!という方がいても、脳卒中患者さん、もしくは大腿骨頸部骨折患者さんのスペシャリストではない可能性があります。
私たちは患者さんを良くする専門家でなければいけません。
1つの領域をマスターすることは大事ですが、私がいる回復期病院では現実は違います
PTとしての専門的知識やスキルは当然必要であり、それに加え生活の視点や多職種との連携ができる必要があります。それが回復期病院で患者さんを良くするために必要な専門家の要素なのです。
回復期では何が大事?
日々の座っている車いすや寝ているときの姿勢
食事量や栄養状態
排尿・排便状況
入院中の生活リズム
その患者さんが感じている入院生活のストレス
患者さんのneedsに沿った関わりと目標設定
患者さんを良くしていくには、そんな生活場面をみながら、必要なことを提供できること。すると、シーティングの知識やスキル
排尿障害に対するアプローチ
不眠やストレスを緩和できる関わり
こうすると、多職種との連携が不可欠です。だからいくら、神経科学に詳しくても、現場で大事なことはまた違ってきます
なぜなら、患者さんが良くなるには、患者さん自身が学習できいる環境や精神面、やる気が重要です
よく食べて、よく寝て、よく運動(リハ)する、そして良く出す(排泄)!
基本が大事です
筋肉に対する関わりではなく、人に対して関わる視点です
だから、○○アプローチに特化した療法というのは、それに該当する方には良いですが
回復期病院の脳卒中の患者様に全て適応することはないと思います
逆に学会等では、色を出したり簡潔に述べるために、その療法しかやっていないというような感じでみえてしまうかもしれません。
僕の病院でもKAFO療法を積極的に行っています
私自身も使用しています。しかしだからといって、これだけやればいいわけでは当然ありません
むしろ、しっかり生活が整って、モチベーションもあって、そんな状態にあって、こういう特化した療法を行うから、改善しやすいのであって、不眠、食欲不振、すぐ疲れしまう、高次機能障害が強い、リハ拒否があるなどの方に、PT的な○○療法を行ってもどうでしょうか?
つまり回復期病院で「結果」を出すためには、生活視点や多職種との連携、医学的な情報(血液データ、画像等)、目の前の患者さんを多角的に評価できるスキル、そしてしっかり治療できるスキル
というような、様々な能力が必要かと思います。
PTの知識・スキルを深めることは当然、専門家として必要です
それに加えて患者様に結果を出すためには、好きな分野や自分の領域の分野だけでなく、苦手とする分野や嫌いであまり手に付けていなかった所をしっかり学ぶ必要があります
それが回復期病院で携わるプロではないでしょうか?
神経や筋肉の知識やスキルのプロではなく。
ボバースや認知、長下肢などで有名な病院や色を出してやっている病院はありますが、その療法に関する知識やスキルは当然高いものをもっています。
だからといって全ての患者さんを良くできているかは分かりません
その療法に合った方はいいでしょうが、その療法だけではもちろん不十分ですよね。
私自身、長下肢装具療法を押していますが、やり方によってはよくも悪くもなります
悪くなりますっていう表現は適切ではないですが、効果量が乏しい方や、無理やりやって体を固くしてしまう方なども経験していて、ゼロではありません。
要は使い方なのです
他の療法も全く同じです
使い方、やり方次第で変わります
自分もやっと長下肢装具療法の使い方が分かってきたくらいです。
いくら立って歩いた方がエビデンスがあるからといって、過剰努力には逆効果もあるのではないでしょうか?
過剰とは、患者様自身が適応や学習できるか。
一見無理そうでも、若い方や個人差によっては、やることで良くなると思います。
つまりちょっと頑張ることは脳にとっても良いことですが、限度を超えるとそりゃよくなりません。
これはリハの原則だと思います。この頑張りに耐える力は、患者様の個人差や障害の重症度にも影響するでしょう。
僕の言いたいことは、
「バランスが大事」ということです
PTだけの狭い知識だけでなく、いろんな視点をもつこと。
ある療法に特化することも大事ですが、それだけやって良くなる方いない
自分の好きな療法も、使い方、やり方次第で全く違う
回復期病院で「結果」を出すためには、PTとしてのスキルを磨きつつ、多職種の幅広い視点や生活をみる。
特殊な療法や治療を盲目的に信じず、実際の臨床で試行錯誤しながら問題解決をし、その療法の特性を知る。
自分の得意分野として極めることは大事だが、それだけでなく、バランス良く治療することが大事。
そして目の前の方には何が一番効果的かと考える作業が大事かと思います。
それが患者様を広い視点から評価でき、その都度、効果的な治療を選択でき、患者様が抱える問題を解決できるスキルになるのでしょうか。
私たちの病院でも、外部に対し発信していくときは長下肢装具をあげますが、それだけやっているわけではありません。
臥位の練習もすれば、トイレ介助もします。
時には食事介助もします。
その中で長下肢装具を行います。
バランス良く行います。
僕自身バランス良く行ったほうが結果が出ると感じているからです。
そして「結果」にフォーカスを当てる事。
リハビリでいう結果とは?
機能があがることでしょうか?
FIMの点数があがることでしょうか?
もちろん機能向上や、点数向上は大事です。
みなが指標にでき、参考にでき、比べることができますので。
しかし、
最終的には患者様のneedsを叶えることが「結果」になるのではないでしょうか。
と、最近教えて頂きました。
そう考えると、結果を出すためには、何が必要になってくるのか?
私たちがリハのプロである以上、お金を頂いて行っている以上、
真剣に誠実に考える必要があります。